約束

約束

約束

この本の2番目に「青いエグジット」という短編があります。
引きこもりで左足に障害がある青年が、ふと目にした青いポスター。
BLUE EXITという言葉と、片足の人物がダイビングをしているらしい真っ青な写真。
青年とその家族はいろんな葛藤や駆け引きや計算を乗り越えて、青年はダイビングを習います・・・

そんなお話なのですが、それを読んでふと考えました。
それは、引きこもりという状態が必要としているのは一つのきっかけに過ぎないのかもしれないな、ということです。


誰でもうつになったり引きこもりになります。それは1時間のうちの5分かもしれない。1日のうちの1時間かもしれない。1週間のうちの1日かもしれない。1ヶ月のうちの3日かもしれない。
それが1瞬だけも人もいれば1日だけの人もいる。1ヶ月続く人もいる。1年続く人もいる。ただ、程度だけの違いで、みんななにかの「過程」なのではないだろうか。


そう思いました。

この家族はこの「きっかけ」に出会うまで、青年もお父さんもお母さんもいろんな瞬間と気持ちと絶望と期待と思惑と駆け引きと愛と憎しみと後悔と希望と・・・いろいろなものがあったのでしょう。そうしてその「過程」の最後の段階があの青いポスターだったのではないかなと感じました。
現実でもときに小説みたいな感動的な瞬間もあります。けれどそれは、何もないところからいきなり生まれるのではなく、全ての人が何かの過程を、苦しんで迷ってもがいて落ちて沈んで這い上がってのたうって、そうして通り抜けてやっと出会う瞬間なのだなとこの仕事をしていると教えられます。