眠る前に読むべきではない本


眠る前に読むのに絶対にオススメしないのがこちら、


AMEBIC

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彼女の本は、前作もその前の本もやはり眠る前には読むべきでない本ですが、今回のものはほんとうに一度もおふとんに持っていけませんでした。・・・職場で読みました。


そうですね。コメントするのは難しいですね。なので、少し長くなりますが引用してみます。こんなに長く引用していいものなのかどうかわかりませんが、できれば5ページ丸まる引用したいところを我慢して抜粋しますね。

 ああ寂しいああ悲しいふふ一人だ私は。何故私が錯乱をやるのかと言えば、錯乱をしている瞬間もしくは錯乱している時間いくらかの時間は寂しいとか悲しいとかそういうことが当然だと思えるからなんだよって当然じゃんでもまともな精神で生きているとああやっぱり誰かと融合したーい一体化したーい溶け合いたーいとか思っちゃうじゃんかだからわざわざ錯乱するんだよ自らね。                 

(中略)

まったくたまねぎのせいもあるけど涙が出てくるぜ。こんちくしょう誰か助けてくれればいいのに誰かが私を多すれに来てくれるばいいのに誰かが。そう誰かが。歩み寄れ優しく手をさしのべろ私を受け入れろこの野郎誰か私を助けに来てくれればいいのに私を助けて私の存在を証明してくれればいいのに私の存在を声高に叫んでくれればいいのにそれは奇しくも自分からではなく誰かからという事が大事であって誰がという点も大事であるのだ。唯独りで生きる人間は罪であると言うではないかそうそう誰かが言っていたではないか私どうでもいいけど”むかつく何かがむかつく何何何もいいけど何もだめわ”゜]tzh

    −金原ひとみ『AMEBIC』集英社 p110-114


この本はもう、賛否両論わかれまくりの作品です。


内容はというと、作家らしい主人公の女性は一切の食べ物を拒否しています。サプリメントと野菜ジュースとお酒と水と、ときどきお漬物。抗うつ剤や鎮痛剤なども飲んでいるようです。ときおりお酒などのために記憶がとび、翌日気づくと引用文のような散文がパソコンに残っています。その散文を書いている自分が、普段の自分に何かを伝えようとしているのではないかと感じつつ、日常を送ります。日常の中で彼女は、タクシーの中で、自分の恋人がもうすぐ結婚をする予定の女性(パティシェ)になりきってみたりするのです。


最後まで読みました。
私はこの本に“文学的価値がある”と感じました。この時代のある精神の形を、これほど強く克明に表現できる作家は彼女しかいないのではないかと思います。ものすごく正確に写実され、創作された文学なのです。私たちの中にひそむ一面であり、ある人々の日常であり、誰かの心の地獄であり、誰かの心の平穏なのです。


このようなある状態の内面の形を、ブログやネット小説ではなく、文学として表現し、出版し、遺すことができる人がいることは、とても得がたいことだと思います。


でも・・・寝る前に読まないようにした方がよいでしょう。
休日の昼下がり向けでもありません。
それはある種の文学にとっては難点であり、また非凡ということでしょう。