男性の「隠れたうつ」

 そろそろうつ病研究の第2弾をまとめなくては・・・。
今回は男性の社会人に的を絞る予定なのだが、データ上ではなかなかクリアにその特徴が現れてこない・・・。


 うんうん悩んでいたら、こんな本が私の本棚にあるのを見つけた!!そうそう、このようなときのために、気になる内容の本は買いだめしてあるのだ☆


男はプライドの生きものだから

男はプライドの生きものだから


 例えば、うつ病は女性に多いとされているのだが、実際これは受診率であり、主観的に感じられる苦しみと訴えを反映したものに過ぎないと考えられている。ここ数年、中高年の男性の自殺率の上昇が危惧されているが、彼らは「まわりから見てすぐにわかるうつ病」を発症しない。自分で自分の感情や疲れに気づかず、人に心を打ち明けることなく、仕事に自尊心を依存し、テレビや酒によって考えることと苦痛に気づくことから逃げ、そして助けを求めることなく死を選ぶ。


 なぜ彼らは自分の苦しみから目をそむけるのだろう?考えることを極力避けながら毎日を生きるのだろう?

 
 自己疎外と失感情症は、男性の「隠れたうつ」の典型的な症状であるとリアルは述べている。これによって、彼らは、自分たちが親から受けた「優しい暴力」から目を背けられる。過度の期待を受ける、何度もさりげなく見捨てられる、情緒的ネグレクトなどの被害にあい、痛みを抱えながらも、男の子たちは親の期待に答え、親を守り、男らしくなろうと防衛と努力を重ねてしまう。そして、自分自身の感情と、人生と、親密な人間関係から阻害されながらも「男らしく」生活し、ロボットのように仕事をし続けようとするのかもしれない。


気になったところを引用してみる。

「隠れたうつ病」の男は次の3つの理由から対人関係に対処できなくなっている。

第1は、自己調整のための嗜癖的防衛行為が最優先されていること。

第2は、他者と心のつながりを持つことは必然的に自分の心を覗くはめになるため、他者への親密な関わりは避けたいと願っていること。

第3は、対人関係のスキルがひどく未発達なため、親密な人間関係を求められると、すでに十分感じている自信のなさをますます強めてしまうこと。


第11章 人間関係を学習する p319  Terrence Real "I don't Want To Talk About It" ( テレンス・リアル 『男はプライドの生き物だから』 講談社 2000)


なんとく、男性のカウンセリングは苦手だと感じていたのだが、それはもしかしたらこの「隠れたうつ」を取り扱わなくてはならないせいかもしれない。硬い殻、奥底に抑圧された記憶と感情、カウンセラーの中にもクライエントと同様に存在する「男らしさ」への偏見・・・そういったものに治療的に対処していくために、この本はまさに必読書である。