「これじゃあ、医者も壊れるぜ」的医学ミステリー
*以下、ネタばれの可能性があるので、これから読もうと思っているヒトはご注意ください。
- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2006/02/04
- メディア: 単行本
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なんだかアレ、みたいに思われるかもしれないですけれど、このほん第4回「このミステリーがすごい」大賞受賞作です。そう、あの名作
第1回「このミステリーがすごい」大賞
(すごーくよかった!)
と同じく。
「どこが違うんですか。僕たちは医学の進歩のために、イヌの命を奪う。ヒトの命だって同じことでしょう?
命を奪うことは自然です。命は奪われるために存在するのだから。誰でも、他の命を喰い殺して生きている。ヒトの命を奪うことだって自然の営み。
僕が面倒を見ているイヌは、尻尾をぱたぱた振りながら、僕にすり寄ってくる。イヌは可愛い。だけど僕はそのイヌを殺す。医学の進歩という大義名分の名の下に。僕にとってヒトは、隣を通り過ぎる見知らぬ物体と同じ。感情移入はしない。可愛いイヌさえ殺せるのだから、ヒトを殺す時には別に何も感じない」(中略)「俺たちは、命を救うために仕事してきたんじゃないのか」(中略)
「先生は、本気でご自分が命を救っているとでも言うんですか?田口先生だって僕と同じ。病院といういびつな生命体の排泄行為を代行しているだけですよ。ヒトのためでなく、自分や組織を維持するために働いているだけです」
海堂尊:『チーム・バチスタの栄光』, 宝島社, 2006, pp.309-310.
すごいですよね。このせりふ。
病院といういびつな生命体の排泄行為を代行しているだけですよ。ヒトのためでなく、自分や組織を維持するために働いているだけです
さすが勤務医。
こんな血のこもったセリフはなかなか書けるもんじゃないですよ。
この小説は、迫力があります。デビュー作なので、足りない部分もあるのでしょうが、それをカバーして余りある面白さでした。大学病院の内部構造論にとどまらず、ER的な手術室の描写、人間関係の配置の細やかさ、そしてふたりの探偵役と容疑者役のすばらしい心理戦。まさに『DEATH NOTE (12) (ジャンプ・コミックス)』のようです。探偵役のひとりが不定愁訴外来(通称、愚痴外来)の神経内科医というところもおもしろいです。もうひとりの探偵役は濃い〜キャラクターで、『イン・ザ・プール』の伊良部医師をもっとスマート&変人にした感じです。おもしろい!!
オススメ★★★★