脳の機能障害を知る:統合失調症、侵入思考


統合失調症のため通院している方と面接をしていると、いつも不思議な気持ちにとらわれる。それは、私たち「普通の」脳の感覚や運動のエラーと彼らの脳のエラーには、共通項があるということであり、そのエラーはあくまでも程度の差でしかないという感覚である。質の差ではない。「異常」と「正常」のはっきりしたラインがあるわけではない。例えば侵入思考にしても、私たちがふとした日常で感じ、忘れ去るようなものを、彼らは敏感にキャッチし、反芻し、握りしめ、手放せなくなるということだけなのである。その差をつくるものは何か?それは明確な異常性ではなく、やはり脳の運動機能障害なのだ。


うつ病統合失調症も、脳の機能障害を理解するための縮図であると捉えられる。どのような機能のエラーによって、現実適応のための認知と行動のエラーがでるのか、感情統制のエラーがでるのか、私たち心理臨床家は常に学んでいなくてはならない。日々勢いよく進歩する脳科学を学ぶことなしに、「心の病」を扱ってはならない。さもないと、必要以上の「病をもつことの罪悪感と劣等感」を和らげてあげることができない。科学的事実というのは、とっても役に立つ。患者のこころにとっても、家族のこころにとっても、そしてもちろん治療にとっても。


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統合失調症あるいは精神分裂病 精神病学の虚実 (講談社選書メチエ)

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統合失調症の早期発見と認知療法―発症リスクの高い状態への治療的アプローチ

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侵入思考 ‐雑念はどのように病理へと発展するのか‐

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