BPDに対するアプローチとしての「弁証法的行動療法」(Dialectical Behavior Therapy:DBT)の入門書


弁証法的行動療法実践マニュアル―境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチ

弁証法的行動療法実践マニュアル―境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチ

BPDと発達障害の合併事例、もしくは鑑別困難なケースが目に付く今日この頃。
BPDに対して分析的なアプローチをしていても、アスペルガーのようにフラッシュバックが起こったような状態になり、混乱し、解離症状が強まることもある。あるいは、一方的視点からの被害的な物語が何度も繰り返され、増強される場合もある。カウンセラー自身もまた、その被害的な物語に取り込まれ、巻き込まれ、保護者に対して否定的感情を持ち、クライエントの新たな適応スキルの獲得に向けて背中を押してあげることができなくなってしまう恐れもある。


そんな中で、このようなSSTアプローチはクライエントの利益のために必要なものではないかと考える。


クライエントにエンドレスループで過去に目を向けさせるのではなく、今ここで、今これからのために、対人関係の中での傷つきやすさやトラブルに対処していけるように練習する場が必要だろう。BPDの対人関係の持ちようについて配慮しながらクライエントとやり取りをする専門知識と技法をもって、信頼関係を築きながら、日常のひと場面ごとにトレーニングしていくという方法は、クライエントの心に侵襲する恐れも少ない。

過去の対象関係よりも,現実的な対人関係で起こるさまざまな問題行動を患者のソーシャルスキル能力の不足と捉えて,そのトレーニングを徹底する技法である。認知行動療法に特有の科学的な検証を経た治療効果を出すことができたということで,注目を浴びるようになった。著者リネハンらによると,本書は20年来の試行錯誤の経験を踏まえた,技法,ソーシャルスキル・トレーニングの解説書であるという。

牛島定信 『推薦のことば』 マーシャ・M・リネハン著/小野和哉監訳 『弁証法的行動療法実践マニュアル』A5判 300頁 定価4,410円 2007年9月刊


ぜひ、学んでおくべく技法であると思う。