魂の癒しの物語 『精霊の守人』『闇の守人』
- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/03/28
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素晴らしかったです!
物語世界としては『ゲド戦記asin:4002031187』に近い感じです。久しぶりに時間を忘れて読みふけりました。
チャグムという皇子が、その身の中に別世界の生き物のたまごを宿します。
別世界というのは、この世界と同時に存在する平行世界のようなもので、ときどきつながりあう時空が存在し、そこで不可思議な現象が起こるようです。
たまごを宿した皇子は、たまごを無事に孵すまで、たまごを守りながら生きます。その様子は、周りの人からはとても奇異に見えます。皇子には2つの世界が同時に見えてしまうからです。皇子は雨や雲の動きをつかさどる精霊を無事孵すために1年間の旅に出ます。王宮とみやびな生活から遠く離れて、庶民とともに行き、女用心棒(バルサという主人公)に守られ、鍛えられ、成長しながら、2つの世界以上のものを理解していきます。
この状態はすごく精神疾患に似ているように思えます。
ある一定期間、なにか大切なものを育み、孵すために、普段とは違った世界が見えるようになり、普段とは違った声が聞こえ、普段とは違った振る舞いになってしまう。その間、魂は成長し、鍛えられ、愛され、守られ、そののちに大切な何かを生み出すのです。
この物語も素晴らしかったのですが、ほかにもチャグムという少年の成長の素晴らしさ、バルサの生き様の潔い美しさ、他にもさまざまな人々とのふれあいがいきいきと描かれています。
ぜひ、心理職の人たちに読んでほしい物語です。