結婚について考え、『風花』を読む


風花

風花


「わたし、離婚した方がいいのかな。」という帯になんだかつられて購入。
結婚したいような、結婚したら2人の間のなにかが失われるのが怖いような、そんな今日この頃の気持ちにぴったりフットするかしらぁ〜と期待しつつ。


昨日1日、むさぼり読みました。簡単にいうと、結婚した7年目の夫婦のはなし。夫に恋人がいたと知らされた女性のはなし。


夫に恋人がいた、と知らさせることほど怖いことはないように思う。
結婚したいくらい好きで大切に思う男性が、他の誰かに恋をしたと知らされるのは、想像するだけでもこころがぞわぞわとして、すーっと冷たくなってしまう。とっても怖い。これは、結婚したらもっと無防備になって、もっと怖いことになるんじゃないのかなと思う。 ぅぅぅ、怖いよ〜。


この作者が物語ると、ありふれたはなしもなんだかしっかりと骨太な感じになる。答えの出ないあいまいな感じを、骨太肉厚に描いている感じ。ステキです。


おおお、と思ったところを抜粋してみます。


 この大きなかたまりのような「男」と、わたしはいったい、どうしたいんだろう。のゆりは思いながら、もう一度、二度、呼びかける。 (p183)



自分は今、ちょうど保育園に行きたがらない子供みたいになっているのだということを、のゆりは承知している。ちがう場所に行きたくない。ここを離れたくない。たくさん人のいるところはいや。
 いざ保育園に行ってしまえば、すぐに泣きやんで、まわりの子供たちになじむことはわかっていた。けれどもどうにものゆりは、ここを離れることができないのだった。
 でもいったい、ここって、どこ? のゆりは自問する。
 どうしてもとどまっていたい「ここ」なんて、今ののゆりにはないはずだった。卓哉はいない。ここにいても、ここにはいない。姫路はなじんだ土地でもない。親しく言葉を交わす相手もいない。
 それでものゆりは、「ここ」を離れたくないのだった。 (p199)


川上弘美 『風花』 集英社 2008年


誰もがみんな「ここ」を離れたくないんだよね・・・。そうしみじみ思いました。