りょうちゃん師匠のアドバイス

かーめーはーめー



 地域の精神科医を対象とした研修会で発表者となったとき、私はとても緊張していた。何度もパワーポイント資料を作り直し、わかりやすいか、筋は通っているか、エヴィデンスがきちんと示されているかなどなど、ひどく気を使った。ふだんの一般向けの講演では適当にしゃべっているのに、シナリオまでつくった。当日どのような鋭いつっこみをされるのだろうと怯え、涙目になって震えていた。


 当日のお昼、りょうちゃん師匠(8歳)と一緒にお昼ご飯を食べた。発表は3時から。緊張はピークに達し、ご飯もなかなか喉を通らない。


「りょうちゃんどうしようー。緊張するよー」と悲壮感を漂わせる私。


 そのとき、りょうちゃんはていねいに私の話を聞き、こう言った。



「大丈夫だよ。



まちがったらね、“失礼しました”って



言えばいいんだよ」



 な、な、なんと、りょうちゃん師匠の素晴らしいアドバイス! 私はりょうちゃん師匠の優しさと思いやりに励まされ、心がほかほかと温かくなり、家族っていいなあ…と感動にうちふるえた。


「そうだね。まちがったら、“失礼しました”って言うよ〜」


「うん。そうしなよー」


 そうだ。間違ってもいいのだ。鋭い質問が出ても答えられなくってもいいのだ。“えー、失礼しました。ごほん”とニュースの最中で間違えたニュースキャスターのように堂々としていればいいんだ。私はりょうちゃんの愛につつまれ、すっかりリラックスしてご飯をたくさん食べ、会場に向かった。
 結局、講演はものすごく何事もなく終了し、やや的外れな質問に戸惑った程度で終わった。好意的な評価もいただき、とてもよい1日であった。


 しかし・・・りょうちゃんはどこでこのような知恵をつけたのだろうか? それが一番のナゾとして残った。