文章に恋する
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/10/20
- メディア: 単行本
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はぁ。もう結婚してほしい。
そんなことを思うくらい。伊坂幸太郎の文章には魅力がある。フェロモンがある。私を惹きつけてやまない。
「声に惚れる」ということがあるが、同じように「文章に惚れる」ということがある。
声に惚れるのは、例えば福山とかキムタクとかが例として挙げられるが、彼らはそういうもとから声の素質がよい場合に、人間性と男性的魅力の向上努力が加わり、それがパーソナリティの魅力となって声に力が加わり、さらに非言語的コミュニケーションの部分(声の大きさ・トーン・ピッチ・柔らかさ・高低)において入念にコントロールされた結果の現象であると考える。
つまり、ただ声がいいからというだけで「声に惚れる」という現象は生じない。人間的な魅力やその人の努力や、相手に対するときのものごしなどが声と共に相乗効果をもって、大きな誘引力をもつのである。
同様に、文章に惚れるということは、文章がうまいのはもちろんであるが、その言葉の選び方、キャラクターのつくりかた、せりふの語らせ方、物語の形のつくりから、物語の流れ、行間で伝えられることの全てにわたって、作者の人間的魅力、向上努力、読者に対するやさしくてセクシーでキュートなものごしがあふれており、それがある読者のハートをずきゅんとメロメロにしてしまうのである。
もちろん、村上春樹の文章は、作品の全てはすばらしい。これはもう別格で神話的にすばらしい。
私は1年間アメリカにいた経験があるのだが、留学先でふと手に取ったニューヨーカーで『The Elephant Vanishes』を見つけたときの感動は忘れられない。その感動はどう言葉にしたらいいかわからない。春樹的な表現を踏襲させていただくならば、とにかくそのとき、孤独でばさばさだった心のけばだった部分がやさしくなでつけられ、あらたにけなみをそろえられ、紐がきちんと締めなおされ、むきが優しくそろえられ、そっと背中を押されるような感覚があった。英語で読んでもその短編はほんとうに素晴らしかった。私はそれを誇りに思った。
そんなことがあるので「嫁にしてほしい」とかミーハーなことは言ってはいけないのである。でも、伊坂さんには言える。なぜだろう?
それはきっと何か同世代的なものを感じるからかもしれないな。それに東北大学法学部卒なんていうところにも、どこか似たような高校時代、大学時代があったのかもしれないなあなんてイメージしたりできる等身大な同級生的な、なんらかの過程を省いてわかりあえる雰囲気があるのかもしれない。
ふとクラスで隣に座っている男の子が美しい字を書いていた
ふと2つ上の先輩が放課後の音楽室で、美しい手で語りかけるようなピアノを弾いていた
ふと昔の同級生が電話で、人生の厚みを感じさせるようなひとことをやさしく深い声でささやいた
なんだかそんな感じで、近い存在なんだけどはっとさせられる。
ああ、とにかく素敵です。
愛をこめて・・・
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全部すすめたいんだけど、ここからだと入りやすいというオススメのやさしい入り口。
追記:
あ、そういえば・・・「手に惚れる」っていうのもあります。
手を使う仕事の人の手っていうのは、とても魅力的にその人の仕事を語ります。
音楽家の手、歯科医師の手、ワイン醸造家の手、999.9のスタッフの手、棋士の手・・・
あれ?そういえば心理士の魅力はどこかなあ?
声?表情?言葉?・・・言葉かなあ?