少年犯罪についておもう


天使のナイフ

天使のナイフ


読みました。
うん。よかったです。少年犯罪について被害者の立場から、そして加害者の立場から、贖罪しようとする立場から、更生させたいと願う立場から、更生できるわけがないと憤る立場から、しっかりと読める作品だったと思います。


主人公は幼い子どもがいる男性です。妻を中学生に殺されました。その苦しみと怒りと痛みを抱えながら、愛する娘のために懸命に生きていたところに「少年Bが殺された」ことを警察から知らされます。アリバイ確認のために。


そこから始まり、主人公は更生と贖罪について、少年の犯罪について、強く深く悩み揺さぶられながら、謎をおっていきます。


これを読みながら、今の中学生のこと、高校生のことを考えました。被害者になり、加害者になりうる彼ら。今サポートしている高校生のケースでも、ほんとうに些細なことで同じ学校の子との関係の中で加害者になったり被害者になったりしています。そんな彼らも、もうすこし大きく見ると、保護者に見捨てられていたり、精神的に虐待されていたり、「程度の悪い高校」と社会から蔑まれていたり・・・という構図の中では被害者です。


家に帰っても誰もいない。あたたかい夕飯もない。帰ってきた親からは冷たい目で見られるという子が、学校の誰かについてしまった底意地の悪い嘘・・・。似たような家庭境遇にある被害者の子がそれを大げさに騒ぎたて、クラス中に広める・・・。一体誰を責めればいいのか、誰を叱ればいいのか、どこを支援したらいいのかと途方にくれることもあります。


そんななかでひとつだけ考えていることは、全小学校に週2回以上、できれば常勤でスクールカウンセラーをおくという予防的な支援です。


子育てが分からないこともある、家族のストレスが大きすぎることもある、子どもが幼いときに離婚してしまって、経済的にも精神的にも苦しくてとにかく生活だけに懸命な家庭もある、けれど経済的にも社会的にも心理的にも全く支援がない・・・そして結果的にDVになり、虐待になり、精神的捨て子になっているというケースが多く見られます。


小学校であれば、まだ効果的に予防的に支援できることが多いのではないかと私は考えています。すべての家庭が小学校のうちに子育て支援を受け、心理的な教育を受ける機会があり、心理的援助と発達支援と、必要であれば経済的援助を適切に受ける機会があれば、何かが変わるのではないか?最低週に1回は、すべての教室に、集団指導と教育という専門的な仕事とは別の視点から仕事をする専門家がいれば何かが違ってくるのではないか?


中学校の数倍も忙しく小学校で仕事をしながら、あるいはすっかり親子関係がこじれたケースを病院で扱いながら、甥っ子の成長をじっくり見つめながら、そう考えます。