相変わらずカッコイイ作家


砂漠

砂漠

「それは駄目だ、うん」山田が充血した目で、西嶋を覗き込む。「勝手なことしたら駄目なんだって。目先のことのために、歴史全体をね、左右しちゃ駄目だ」

「それなんですよ」西島が声を大きくする。「さっきの募金と同じですよ。関係ないんですよ!歴史とか世界とかね。今、目の前にある危機、それですよ。抗生物質をあげちゃえばいいんですよ。その結果、歴史が変わったって、だからどうしたって話ですよ。抗生物質をあげちゃえばいいんですよ、ばんばん。みんなに広めちゃえばいいじゃないですか。あのね、目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ」

伊坂幸太郎 『砂漠』 実業之日本社 2005 p83−

 仙台で過ごす5人の大学生の話です。


 いつもながら、やっぱり、登場人物ひとりひとりが生き生きとクリアに描かれています。目の前に現れて好きなことを話し出すのではないかというくらい、その人のイメージがくっきりしています。


 そして、その人物たちに語らせる台詞がいい。かっこよかったり、かっこわるかったり、哲学的だったり、傍若無人だったり。


 まだ途中なんだけど、やっぱり作家に恋してしまう。もったいなくて続きが読めない。はぁぁ。