愛が死ぬ (愛は消滅するか? No.2)
- 作者: ニコラス・スパークス,雨沢泰
- 出版社/メーカー: アーティストハウス
- 発売日: 2005/08/30
- メディア: 単行本
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ではなぜ、わたしたちはこうなってしまったのか?
口にするのはつらいが、どこまでも正直に言うならば、われわれ夫婦の問題の大半は、わたしの悪気のない怠慢にあると思っている。家族の要望よりキャリアを築くほうを優先しがちだったのもあるし、ずっと夫婦関係は安定していると思いこんでいたこともいなめない。わたしから見ると、われわれ夫婦に大きな問題はなかった。(中略)ジェーンはわたしがどういう人間か、むかしからわかっているのだと自分を安心させていた。それで十分だと思っていた。
だが、ようやくわかってきたことがあった。愛情とは、寝るとき口にする“アイ・ラブ・ユー”ですむものではないということだ。愛は行動にささえられるものだ。毎日、おたがいのためにする献身的行為のなかにある。
家族写真を見つめて考えたのは、もしかしたら30年におよぶ悪気のない怠慢が、わたしの愛情を偽物に変えてしまったのではないかということだった。
ニコラス・スパークス『きみに読む物語 もうひとつの愛の奇跡』アーティストハウス P80-81
この物語は、長期的な関係の中で愛が死んでしまうことを知ったすべての女性が夢見る物語である。
愛は男性の中で色あせ、失われ、移ろい、時には殺され、息絶える。
愛は女性の中で、ただ死ぬ。死に方にささやかな違いがあるだけだ。
この主人公のように、結婚に代表されるような相互依存を含む長期的関係における、男性の「対女性」社会関係スキルには特徴がある。
1. 話し合うのを避ける。
2. 話し合いがなければ「問題がない」と思う。
3. 安心し、努力をやめ、考えるのをやめ、ロマンティックにふるまうのをやめる。
4. サービスを提供するのをやめ、「仕事があるから」「家族を経済的に支えなくてはいけないから」「疲れているから」「妻はわかってくれているから」とサービスを受ける一方にまわる。それが当然であることをどうどうと、あるいは暗喩を使って、あるいはジェスチャーを使って主張する。
5. 「八つ当たりを受け止めてもらえる+何も文句を言わない」=「わかってくれている」と理解する。
6. くどくど文句を言われると、問題は「自分」にあるのではなく、「がみがみ言う妻」であると考える。
7. 良好な関係のメインテナンスのために、情緒読解力、素朴な心理学、自己の言動のフィードバック判断装置を、全く使用しないことが「愛情ある普通の関係」の証明であると思う。
さて、以上のような男性的能力が発揮されるような、相互依存を含む長期的関係において、女性もまた特徴的な行動を取る。
1. 相手が「愛しているなら、わたしから言わなくても、わたしのしてほしいことがわかるはず」と、エスパー的思いやりを期待する。
2. 1で期待した言動が起こらないと、黙って傷つく。
3. 1で期待した言動が起こるまで、さまざまな努力を行う。(例)拗ねる、泣く、黙り込む、プリプリする、がみがみする、いやみを言う、その他のActing Out(浮気、自傷、飲酒、服薬、無謀運転)。
4. 自分の「幸せ」と自尊感情が、愛する男性の言動に左右されている。
5. 関係が形成される前と全く変わらない自分だけの世界を手放す。
6. 相手を尊敬することを止め、対等な関係の相手として尊敬を求めることを放棄する。
7. 「この人はこういう人だから」と自分に言い聞かせ、あきらめる。
8. 周囲に対して、いかに自分が幸せであるか過剰にアピールする。同時に自分を欺く。
このような2者がそれぞれの対異性スキルを改善しないまま、相互依存を含む長期的関係を続けていくことによって、「愛が死ぬ」という現象が起こる。
女性の悩み相談で、未婚既婚を問わず、男性との関係についての内容である場合、たいていこのような対異性スキルが顕著である。
しかし、このような場合はいつも悩む。果たして、コミュニケーションスキルを向上すれば、そのふたりの関係性における問題は解決するのか・・・?まあ、そんな簡単な問題ではないことが多く、すでにそのコミュニケーションスキルの変化を生むような「意欲」が枯渇している場合が多い。特に愛が死んだケースにおいては、この『きみに読む物語 もうひとつの愛の奇跡』のように、奇跡的な努力が双方でなされないかぎり、愛は再生されないであろうことが予想される。
人の心を損なう「愛の死」について、また回を重ねて考えてみたい。
【参考文献】
- 作者: シェリー・アーゴフ,高橋朋子
- 出版社/メーカー: コンシャス プレス
- 発売日: 2002/10/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: アラン・ピーズ,バーバラ・ピーズ,藤井留美
- 出版社/メーカー: 主婦の友社
- 発売日: 2002/11/01
- メディア: 文庫
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- 作者: テレンスリアル,Terrence Real,吉田まりえ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/04
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[私的な臨床心理学的考察]愛は消滅するか?:きみに読む物語 もうひとつの愛の奇跡 - Psychotherapist Tetoの日記あるいはふっくらネコてとの日記