必読!:児童虐待と傷ついていく脳

バリのカニ



 小学校で勤務していて実感する。被虐待児の脳は傷ついている。
 例えば、不潔行為をやめられない。例えば、漢字を覚えられない。文章を正しくつくれない。このようなことが共通点としてあげられる。もちろんデータを取った母集団は限られたものであり、これが被虐待児すべてに共通する症状だとは言えない。しかし、彼らになんらかの脳の形態学的な問題が起こり、「心」だけではなく、脳の発達が阻害され、脳機能に後遺症が残っていることが推測される。それは情緒的な虐待によって長期的に障害を受けたせいでもあるし、身体的な虐待によって、なんどもなんども繰り返し脳に衝撃が与えられたせいでもあるだろう。


 例えば、ある子どもは首のすわらない頃からなんども実父に殴られ、蹴られ続けていたとする。そしてものごころついた頃から罵倒され、人格を否定される。愛情のある言葉や安心感を与えるような抱擁は得られない。このようなケースにおいて、子どもの脳はどのような損傷を受けるのだろうか?

 
 その個人にとって適切な範囲を超えたストレスは脳に傷をつくり、脳をゆがませる、あるいは縮小させる、血流量を低下させる、脳内伝達物質が正しくまわらなくなる、神経細胞が十分に発達できない、あるいは過剰に刈り込まれ神経細胞が死ぬ(比ゆ的な意味でも、神経科学の知見あるいは仮説からも)。


 そのような脳への刺激(あるいは必要不可欠な刺激の欠如)と同時に、器質的な外傷が繰り返し加わる。それが虐待である。



 このような虐待が子どもの脳に与える影響について、医学的理論と多くの研究データを示したものが友田先生による『いやされない傷−児童虐待と傷ついていく脳−』である。2006年6月に出版され、最新の知見がわかりやすく説明されている。


 「心」の症状の予防と治療に関わる臨床心理士は必読である。
 


いやされない傷―児童虐待と傷ついていく脳

いやされない傷―児童虐待と傷ついていく脳


http://www.shindan.co.jp/shinkan/MOKUJIT.asp?KBN=1&selno=5690