真のミステリー作家による医学ミステリ


使命と魂のリミット

使命と魂のリミット

 あーもう、素晴らしい!
 医学ミステリが好きで、けっこう読んでいるんだけれど、これはもう本当の作家が書いたんだなあ唸らされた。やはり勤務医による医学ミステリとは、深みも人物像のつくりも動機のつくりも違う。経験と筆力と重みが違う。素晴らしい。東野さんが書くと医学ミステリはこのようになるのか〜。完敗!!って何の勝負もしてないんだけれども。とにかく、面白くてイッキ読みしてしまい、眠れなかった。
 この作家のよいところは、ミステリーの影に必ず愛あり、というところ。読み終わると、誰かを愛する人物の表情が心に残る。ミステリーと医学がきちんと脇役としておさめられている塩梅もよい。はぁ〜おもしろかった!使命と魂のリミット・・・素晴らしいタイトルとうなづかざるをえないです。


温室デイズ

温室デイズ

 不登校といじめを瀬尾さんらしい角度で書いている。いじめに対しての何もできなさというのが、とてもリアルでスクールカウンセラー業務を思い出す。ケース記録か日誌のようにして読んでしまう。なんだか読書という楽しみ方ではなかった。
 ただ、こういう視点もあるし、こういう視点を持った中学生もきっといると思うと、やはり私たち臨床家も一読しておくとよい本だと思う。とくに、不登校→相談室登校→適応指導教室という流れをたどった女の子の、家族の捉え方や相談室の捉え方は、なかなかカウンセラー側からは感じ取りにくいセンスで描かれている。