『わたしく率 イン歯ー、または世界』のスキゾフレニックな世界
これ以上ないくらいま逆の組み合わせで読みました。
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/04/13
- メディア: 単行本
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ステキです。
でも私としては今までの「軽め」の作品の方が好きですね。
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1999/06/20
- メディア: 文庫
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面白いけれど、軽すぎず、きちんとしっとり感と手ごたえのある小説です。ぜんぶよかったなあ。
こっちのシリーズも。
「―神っていうのは、限りなく無力で、哀れなんだろうな。だからこそ、その悲しみを知る目で、人を見つめる。―そういう目で見つめられるから、人は救いを感じられるんじゃないかな」
カウンセラーもこうでなきゃいけないのかもしれませんね。
さて、これとほぼ同時に読んだのは、このような度肝を抜くタイトルのため図書館の棚にぽつんと残っていたあの作品!
- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/07/26
- メディア: 単行本
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主人公は歯科に勤めちゃうのですが、奥歯にこだわりがあるというかセネストパチー(体感幻覚)みたいなものを感じています。奥歯=自分って考えてもいいんじゃないか? っていう。そういうわれると、ああそういう世界観・自己概念もありなのかなあと思えてしまう、まことに独自の小説世界です。スキゾフレニックとも言えるかもしれません。少し抜粋してみましょう。
<(略)わたしをつねったり踏んだり嫌がらせをしたりするそれはわたしでなくともいずれ誰かに渡さなければならないもんです・いったん自分の中に入った痛みは・誰かに・なにかに・移動させるほかはないんです・三年子さんはそれをわたしに移動させているだけやのです・人も・ものも・一度受けた痛みをためながら生きることはほんまにほんまに困難です・テレビを見ます・人に会います・痛みが暴力というかたちをもって・ありとあらゆる痛みになります・投げて弾かれておりますね・痛みというのはありとあらゆる人々をあらゆる形態で通過してゆく痛みのくせに・それを真実・痛がれるのは・これここ・ここしかないのです!(略)〉pp55-56.
(略)そんなんちゃうで、そんなもんちゃうんじゃほんまのことは、自分が何かゆうてみい、人間が、一人称が、何で出来てるかゆうてみい、一人称なあ、あんたらなにげに使うてるけどなこれはどえらいもんなんや、おっとろしいほど終りがのうて孤独すぎるもんなんや(略)
pp80
こちらは個人の世界の認知の仕方のひとつを克明に表現したものとして、どきりとさせられます。ぜひ心理士のみなさんに読んでほしい本です。