『人のセックスを笑うな』

人のセックスを笑うな (河出文庫)

文庫になってやっと読んでみました。
やっぱりこのタイトルとペンネーム、気になるよね。一度聞いたらどちらも忘れないよね。
第41回文藝賞を受賞した作品なのですが、選評委員たちはみなこのタイトルとペンネームを聞いた時点で受賞を予感したのだとか。

読んでみて思うことは…、ストーリー自体はよくあるようなもの。19歳の美大生と39歳の既婚女性の恋。けれどもその描き方、語り方のなかに、たしかにこの作者なりのタッチがある。高橋源一郎の解説によれば、「内面」を暴き出そうとせず、ただ「理解」しようとする男性の女性性を描いているところの新しさ・・・だそうである。

恋を失う話であり、かなり苦しい気持ちを語りながらも、とてもとてもさらっとしている。それでいて真実味がある。こういうふうに書けたらいいなあ、とうらやましくなった。すごくさらっとしているのに、読者にいままででいちばん苦しい恋のことを思い出させる。カラッと切なく。