『三面記事小説』のなかの悪意の増幅


三面記事小説

三面記事小説

図書館で借りました。ぽつんと新刊の棚に! いい図書館ですね☆
さて、内容は…タイトルのとおり新聞の三面記事から発想を得て、小説としてふくらませたものです。でもこのふくらませかた…とても「黒い」カンジ…。私だったらもう少し違う風な物語をイメージするのになあ、なんでこんなに気分悪い物語にしちゃうのかなあと思いながら読みました。でもまあ、このどうしようもない黒さをしっかりと描くことができるというのがこの作者のすごさなのでしょう。読みたいかどうかは別にして。


臨床心理士として仕事をしていると、このような三面記事にのせられそうな事象にであいます。そのなかでは、人はもっと黒くなるまいとしてもがいているのです。この小説のように自ら悪意や憎悪のなかに飛びこむ人はいません。どの人もみな、もっともっと懸命に生きています。ただ、うまくいかなくて何かがゆがんでしまって、自分ではそのゆがみをとめられなくなって、苦しんで苦しんでいるのです。それでももっと人間は力のあるものです。苦しんでいるなかにも、ゆがみを正そうとする力がはたらいている。その方向がずれているとしても。


ですから、この小説は私にとってはあまり心地よいものではありませんでした。
もっともっと人は「普通」なのです。三面記事にでてしまうような事件を起こした人であっても。
モンスターではないのです。私たちと何も変わらないんです。
ただちょっとゆがみやずれが大きくなってしまって、自分や環境や偶然によってとめられなかっただけの違いなのです。