すてき精神科医カスガ先生の『「治らない」時代の医療者心得帳』



腕のある精神科医は、ほんとうに味のある言葉を使うものです。
相手のふところにすいっと入り込みながらも、ぎゅうっと効くところに効く言葉遣いが絶妙です。


例えば、「困った患者について精神科医にコンサルトしたけど患者は変わらなかった」という内科医への返答として次のように答えています。

…患者とそれをとりまく人たちとの「ユニット」という単位で「落としどころ」を探っていくあたりに、精神科的発想の奥深さと甘っちょろさとが見えてくるわけであります。最後に付け加えておきますが、あなたのような考え方はオーソドックスではあるものの、医者はヒーローであるべきだといった幼稚な心情に通底している気がしますね。 (p139 「救われるべきはあなた」春日武彦『「治らない時代の医療者心得帳』医学書院)


いいですね〜。
「落としどころ」「奥深さと甘っちょろさ」「救われるべきはあなた(タイトル)」これだけでA4用紙10枚以上くらいかけそうな、たっぷりと精神科的エッセンスと精神科臨床の深みをつめこんだ言葉ですよね。もっともっと引用したい素敵な部分があるのですが、それはまた皆さんにご自身で読んで見つけていただきたいです。


精神科臨床に関わるものからしたら「そうそう、そうなのよ〜」、「おおー、そういうしっくりくる言葉があるのかー」と大きな味方を得られたような気分になるよい本です。また、精神科以外の若い医師にあげれば、おもしろがってもらえるのでスムーズに読ませられるし、精神科エッセンスを何気なく理解してもらえるきっかけになるようなよい本です。



マゾヒスティックなダンディズム



なんてすっごく医療者の姿にしっくりくるい〜い言葉ですよね。