臨床心理士が主人公のミスタリー『臨床真理』
やっぱり読んじゃいました。発売当初からずっと気になっていたんですよね…。臨床心理士が主人公のミステリーだなんて…。きっと臨床心理士から見たらエーッているのがあるんだろうな…と思いつつでもなんかやっぱりこの職種の知名度が上がるのは純粋に嬉しくて読んじゃいました。
- 作者: 柚月裕子
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2009/01/24
- メディア: 単行本
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読後感。けっこうおもしろく読みました。後半には臨床心理士の女性としてけっこう無意識に自分を重ねて読まざるを得ないのでウエッてシーンもありましたが、でもなかなかおもしろくて一気に読みました。
主人公は院卒1年目のなりたて新米臨床心理士。病院に勤めて入院患者の統合失調症・軽度知的障害(?)の患者(20歳男性)をイニシャルケースとしてもつことに。主人公はこのクライエントに果てしなく巻き込まれ、逆転移して(自殺した自分の弟の姿をクライエントに重ねまくって助けようとする・自分しか彼を救えないと熱く思う)行動化して(手を握る、クライエントを救うためとして病院外で探偵行動)はちゃめちゃしちゃって、でもなんか警察官の友人男性とともに事件を解決するという感じ。
もちろん臨床心理士が書いているわけでもないし、医療関係者が書いているわけでもないので、ところどころ「うーむ」というところはある。でもよく勉強して書いたなあと感じました。いろんなよいテーマも出ているのですが、浅くとどまっている感じもあってちょっともったいない。
しかしやっぱりカウンセリングのシーンそのものは文句付けたくなっちゃうようなところがいっぱい。「オイオイ、そんなこと患者さんの目の前でカルテに書かないよ…」「患者さんの言うことそんなふうに決め付けたり判断しないよ…」「コラコラ、そんな精神状態の患者さんにそんなこと言ったら、衝動統制できないのは当たり前だよ…心理士はもっと見立てられるよぅ…」とブツブツつぶやきながら読みましたが、でももしかしたら、新米心理士にはこんなのもいるかもなーという気もしないでもない。
でも、こんな新米心理士がいたら、はっきりと言いたい。
スーパーヴァイズはきっちり受けてね…。
職場と上司もきちんとアセスメントしてね…。
でもでも統合的に見ると、こうやって臨床心理士を主人公として使ってくれるのはやっぱり嬉しいかもな〜。
これがシリーズものになるときは、ぜひ臨床心理士に監修をしてもらって、主人公のカウンセリング技術を向上させてあげてほしいな〜と思います。