自分を振った元彼をいつまでも引きずる妙齢女性


約束のない日曜日

約束のない日曜日

([い]2-1)あなたが私を好きだった頃 (ポプラ文庫)

([い]2-1)あなたが私を好きだった頃 (ポプラ文庫)


 過去の自分を見ているようで、非常にイタイ。嫌な私小説である。(タイトルからしてぐいぐいとみぞおちに食い込む力を持っている。)
 恥ずかしいし、腹が立つ。でもなぜか読んでしまう。


 それは過去の自分を見て、「なんとかがんばって、さっさとそんなしょーもない男を忘れなさいよー」と言いながら、ハラハラと手に汗を握っているという感覚で読んでしまうから。恐ろしく嫌な小説である。


 そもそも、自分が相手を振った場合はつゆほども引きずらないのに、相手に振られた場合はかなり長期間にわたってずるずると引きずってしまうのは、考えてみれば不思議なことである。たぶんそれは「愛」というものではなく、「傷つけられた自分」をなかったことにしたいがために相手を取り戻そうとして、思い切れないためであるかもしれない。つまりは自己愛なのではないか。過去の自分を振り返ってみて、そう思う。


 あのときは、「こんなに好きな人に去られて、自分は死んでしまう」というくらいに泣いたり、相手を想って苦しんだりしていたのに、新しい出会いがあって、その人を好きになって、その人に愛されると、あっというまにそれまでずるずると引きずっていた相手を忘れてしまう。なんであんなに好きだったのだろうかと不思議にさえ思う。


 やっぱり、あのとき引きずっていたのは「振られるはずのない、価値ある自分」イメージが損なわれたことによる失望とショックだったのではないだろうか。


 自分を大事にしてくれない、自分に恋していない、愛していない、ひどいしうちをした相手に対して、強い情愛を感じ続けるというのはやはり不自然である。違和感がある。魔法からさめてしまえば、「しょ〜もない相手」であったことが明らかにわかることが多い。自分がそんな相手を好きだったことに怒りさえ感じることもある。となると、自分を振った相手に執着してしまうというのはやはり自己愛のなせる業。恋愛というのは人の弱さをむき出しにさせるものである…。あらためて、恐ろしく思う。