村上春樹を好きになると,他の作家の本では満足できなくなる悲しみ


最近,あのすばらしい短編集

めくらやなぎと眠る女

めくらやなぎと眠る女

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

をじっくりじっくりと,子どもが飴やチョコレートをお気に入りの缶に溜め込んで,1つ1つ惜しむように食べている,そんな感じで読んでいるものだから,その合間についうっかり他の作家の本を読むと,とても苦しむことになる。


でも本が薄くて,図書館の新館の棚にあったものだから,センチメンタルなタイトルにもかかわらず,つい借りてしまって,つい読みきってしまった。

追憶の雨の日々

追憶の雨の日々


公認会計士の主人公は実感のない借り物のような毎日を生きていて,そんなとき中学時代に何度も隣の席になった女性と不思議なきっかけで再会する。ニコという名前の娼婦として。そして2人は失われてしまった過去の自分自身を惜しむかのように2人で共に暮らし始める。そしてもちろん,2人の日々は再び失われる。




作者に申し訳ないとは思いながらも国境の南、太陽の西 (講談社文庫)ノルウェイの森 上 (講談社文庫)ノルウェイの森 下 (講談社文庫)と比べて読んでしまう。



しかし,朝倉さんの本,いろいろ「ううーん」とうなりながらも読了してしまった。この感覚は,好きな人がいながらも遠距離恋愛で頻繁に会えないがために,近くにいる「まあまあ」な男性と食事をして,面白くはあったけれど,なんだかもの悲しくなったという気持ちに似ている。はぁ。好きになればなるほど,「他の人ではだめになってしまう」というのは,果たして幸せなのだろうか・・・。要求水準が高くなってしまうことというのは,心が狭くなってしまうことでもあるなぁ・・・。


朝倉さんといえば,この本はすごくよかったです。今でも情景が頭に浮かんでくる。すばらしい小説でした。

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)