自己嫌悪のおかしみ

現実入門

現実入門


読んだ。
おもしろかった!
短歌を書いておられたようで、短く、切れ味のある文章がよい。
心に村上春樹が住んでいるのもいい。(「私の心の中の春樹が泣きっ面になるのがわかった。」−穂村弘『現実入門』p127 健康わくわくランドに行き、テーマ曲を受付で歌わされそうになったとき。)
たくさん汗をかいて、たくさんびくびくしている。
そんな自分をとことん見つめるという、自己嫌悪のおかしみが、この本のよさなのではないだろうか。批判するわけでも卑下するわけでも悲観するわけでもない。たんたんと、そんな自分を見ていく。


ちょっと小心で、おっかなびっくりになることは、自分では認めたくないけど、けっこうある。心の中の「かっこいい自分」や「かくありたい自分」が、泣きっ面になるようなことは、確かに現実にたくさんある。そういうのを「おかしみ」として捉えて、「おかしみ」としてうまい文章で表現できると、こんな素敵なエッセイがかけるんだなあとうらやましく思った本であった。