恋愛における憎しみと怖れ、そして卑怯であること


なんだか恋愛小説が読みたいなあと思って探してみると、今の自分が読みたいような恋愛小説というのはほとんどない、ということに気がついた。


ティーンズハートでもないし、小池真理子まで行かないし、唯川でもないし、詠美でもないし、男性作家が書くものでも決してないし・・・うーむ・・・国境の南、太陽の西 (講談社文庫)がベストといえばそうなんだけど、ベストすぎて選択肢の外にあるし、スプートニクの恋人 (講談社文庫)を引っ張り出してみたけど、前半だけしかラブストーリーじゃないし・・・。セカチュウの作家の本?それは絶対無理。いま、会いにゆきます的に?うーん、トライしてみるかな・・・。ああ〜誰か、下手に読書の目が肥えたオトナの女性が満足できるようなこころふるえるようないいものを教えて〜〜!!



・・・これは・・・書くしかないかしら?



とまあ、あほなことを考えながら図書館をカサカサと探っていると、ちょっといいもの見つけました。


だりや荘

だりや荘

このシブイ名前の作家。いいね。初めて読んでみたのですが、ただのドロドロした関係のようでいてそうでない。人生と恋愛の中にある憎しみと卑怯さのエッセンスとしての必然性がすごくうまく描かれています。そう、それはすがすがしいほどに。極めて私的な言い方をすれば、宮本輝をライトにしたというような?これはかなりの賛辞なんだけれど。でもだりや荘っていう名前のせいかもしれないですね。あの名作を連想してしまう。あの名作の中のあの空気もなんとなく含まれているような気もします。錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)



人生は憎たらしいほど悲しい―人の心に永遠に留まることを知った女性の純愛の物語

人生は憎たらしいほど悲しい―人の心に永遠に留まることを知った女性の純愛の物語

この作者、幸せの怖さと現実感を、この作者にしかかけないような切り口で描くのがすごくうまくて、うらやましいほどです。3篇あるうちの『人生は憎たらしいほど悲しい』が特によかった。物語としては平凡かもしれない不倫関係で感じる純愛のようなのですが、その語り口やちょっとした言葉づかい、そしてその幸福感と現実感の折り合いの表現が、もうしっくりというかぴったりというか。こんな表現が見つかるなんていいなあって思う。『「原作」死ぬまでにしたい10のこと―初めて人生を愛することを知った女性の感動の物語』の作者ですね。このタイトル、うまいんだけど、長ったらしい副題は逆効果だよってなおちゃんは思うよ・・・。