病職がないとき・・・


今日はほんとうに“どうしてあげたらいちばんよいのかさっぱりわからない”患者さんが受診された・・・。主治医とふたりでうんうん悩んだ。


精神科の症状の中には、「元気で元気でどうしようもない」ものがある。じゃんじゃんしゃべるし、睡眠時間も2,3時間でいいし、本人は元気ハツラツとしてやる気に満ちている。どちらかというと、元気すぎて興奮しやすくなって職場でトラブルを起こして、本人ではなく周囲の人が困ってしまって、上司にすすめられてくる。でも、本人には全く病職がない。


そんなとき、告知して薬物療法をすすめるのが本人のためなのかどうか、ほんとうに困ってしまう。もちろん、長い目で結果を見れば、治療して症状が治まれば周囲とのトラブルも減って、本人にとってよいのだけれど、それをどう説得すればよいのか・・・。


そしてさらに、その患者さんが職業上、薬に詳しい方である場合はさらに難しい。きちんと説得しないままお薬を出すとわかってしまって不信感につながる。でも説明しようとしたら「病気なんてそんなことあるわけないです!!!」と興奮して、やっぱり不信感につながって、どの精神科の治療も拒否するかもしれず、患者さんとその周囲の人にとっては不利益になってしまう。家族が来てくれれば協力してもらうこともできるのだけれど、それもいい大人の場合は提案しづらい。


せめて「ストレスがたまって苦しい」ということだけでも認めてくれればいいのに、「大丈夫です!!とにかく職場に戻りたいんです!!!」という場合・・・


「どうしてあげるのが本人にとっていちばんいいんだろうねえ・・・」と精神科医臨床心理士はあたまをひねった。・・・しかしわからなかった。


とりあえず、検査を取り入れたりしながら患者さんに来てもらって、信頼関係をつくっていく中で、生活上のトラブルを足がかりとして患者さんを支援していくしかないのだろうなあと見守ることにした。


薬物療法をどのようにスタートするかというところからしっかりと考えてくれる医師のいる精神科というのも、とてもレアで幸せなところである。でもそのぶん難しいのだけれど・・・。