ネコと掃除機の関係と恐怖の消去手続きに関する考察

ふたりはいつも



我が家にはネコが2匹いる。一匹はご長寿ネコ、17歳。もう一匹はふっくらネコ、推定5歳。この2匹の掃除機に対する態度は全く異なる。以下その理由について考察する。


今日の午前中、長寿ネコAとふっくらネコBが横臥姿勢を取り、居間でくつろいでいらっしゃった。そこへ、検査者が掃除機を持って乱入。ガーガーという音とともに、掃除機の吸い取り口(?)を床面に対し平行移動した。


Aは全く変わらぬ姿勢で寝ている。しっぽも動かない。目もちらりとも開けない。
Bはすぐさま飛び起きた。フーフーと怒りの表情を示し、背中と尾の毛をふくらませている。3秒後、急いでその場から逃亡し、クローゼットに隠れた。


この違いは何に起因するのだろうか?


ひとつには年齢差があげられるだろう。
Aの5歳頃の行動はBと同様のものであった。それがいつのまにか・・・現在のような「掃除機すっかりなれちゃったワ」的な言動に至る。その過程にはどのような心理的力動があったのだろうか。それを知ることで、Bの掃除機への適応能力を高めることは可能だろうか。


ひとつには


「掃除機は無害なものである」という学習


が必要であるだろう。


Aはこの学習を17年間にわたって行っている。しかし、どれだけの学習経験で「掃除機=無害」という危険認知の消去手続きが起こるのか、残念ながらデータが得られていない。


ふと、気づけば、掃除機へっちゃらになってた・・・。


また、別の要因として、Bが受けた精神的外傷もAとBの掃除機に対する認知的差異を生み出していることが推測される。


そう、掃除機で吸い込まれたり・・・・とか


Bは毛深いネコであるため、ブラッシングが必要である。うんざりした飼い主が、まれにコロコロや掃除機を利用して、抜け毛を排除した可能性がある。このような経験が精神的外傷となって、Bの掃除機に対する警戒心をより高めている可能性がある。


このBの掃除機に対する恐怖を和らげるために、以下の方法が考えられる。


【行動療法−レスポンデント消去技法】


1.フラディングもしくは暴露法;「必要以上にある対象に対して恐怖行動を示す場合、恐怖行動の刺激条件たる最強の対象に晒し続ける手続き」1)


つまり、ネコBに掃除機を押し付け続けることによって、Bの掃除機によって喚起される刺激が般化され、恐怖反応が消去されるはずである。


2.拮抗条件付け;「消去の工夫としてその情動に拮抗する情動、例えば不安に対しては性反応とか食事反応等でもたらされる情動反応をぶつけ」1)て消去を促進する。


つまり、ネコBに掃除機を押し付けながら、エサを与えるのである


3.脱感作技法;「不安との結びつきの低い条件刺激から消去しはじめ、次第に結びつきの強い刺激で消去を続ける。不安に対する拮抗反応には弛緩訓練や自律訓練が用いられる。」


つまり、ネコに動いていない掃除機をちらっと見せては、マッサージやブラッシングを行って、リラックスしていただく。


次に、ネコに動いていない掃除機を近づけて、またマッサージやブラッシングを行う。
次に、動いている掃除機を遠くで見せて、リラックスさせる。
どんどん近づけながら、リラックスさせる。
最終的に動いている掃除機を押し付けながらリラックスさせる。


さて、このような行動療法をネコBに対して適応することは可能だろうか。



・・・絶対ムリ☆


よって、ネコBがネコAのような掃除機に対する安心感を見せるには、「年を取って丸くなり、自然に学習する」のを待つしかないだろう・・・。猫村さん(2005)のように自主的に訓練してほしいと願うしだいである。




文献 

1) 久野能弘 「行動療法」 

心理査定プラクティス (臨床心理学シリーズ (2))

心理査定プラクティス (臨床心理学シリーズ (2))

 pp42-50


ほしよりこ 『きょうの猫村さん』 

きょうの猫村さん 1

きょうの猫村さん 1