ヌルイコイ


ヌルイコイ (光文社文庫)

ヌルイコイ (光文社文庫)


うーん、好き。
秀作!!すばらしい!!
独特の空気があって、映画のようでいて小説にしかない世界の色合い。
先が読めるようで、読めない物語。
登場人物の、はかなくも確かな存在感・・・。


この小説のよさをうまく表現できないので、文庫版の解説から引用します。


 どんなに用心して読んでも心は捕われてしまい、穏やかな気持ちにもなれず、正解が示されているわけでもなく、不安で心地が良いとも言い切れないのに、それでもやっぱり私はこれからもこの作家の小説を読み続けると断言できる。

 それは何より、井上荒野という作家を、信頼しているからに他ならない。

 ギリギリまで研ぎ澄まされた言葉をゆるりと放ち、隙があるように見せかけて、その実、計算しつくされたかのように美しい文章。彼女の小説は、誰かに似ているようで、誰にも似ていない。

 その小さな、けれど確かな違いに、ずっと触れていたいと私は強く願っている。


 藤田香織 「解説」より (井上荒野 『ヌルイコイ』光文社文庫 2005 pp206−212)