心理査定の基礎、脳神経障害の心理査定


心理査定プラクティス (臨床心理学シリーズ (2))

心理査定プラクティス (臨床心理学シリーズ (2))

安いし、内容もすばらしい。基礎から応用まできちんとそろった一冊。


臨床心理査定技法〈1〉 (臨床心理学全書)

臨床心理査定技法〈1〉 (臨床心理学全書)

臨床心理査定技法 (2) (臨床心理学全書 (7))

臨床心理査定技法 (2) (臨床心理学全書 (7))

最近はこんなステキな教科書シリーズもでているのねぇ。いいなあ。


Clinical Personality Assessment: Practical Approaches (Oxford Textbooks in Clinical Psychology, V. 2)

Clinical Personality Assessment: Practical Approaches (Oxford Textbooks in Clinical Psychology, V. 2)

院生のとき、心理査定学演習で「プリ・アセスメント(査定も前段階としての情報収集)」「ジェンダーと査定」「エイジングと査定」「査定の倫理」「思春期・青年期の査定」「心理面接としての査定」「脳障害査定」となど大事なテーマをとりあげ、ひとりひとつ担当してまとめ、発表しました。その時使った洋書のテキストが素晴らしかったです。あとは、大学の図書館でもうひとつの本を使って(高くて買えなかった)補足資料を作りました。
"Clinical Personality Assessment : Practical Approaches"はほんとにスバラシイ!この本を訳すとすごく勉強になります。→http://www.oup.com/uk/catalogue/?ci=9780195142587#authors


診断と見立て―心理アセスメント (臨床心理学)

診断と見立て―心理アセスメント (臨床心理学)

査定における基礎とは、このようなところだと思います。
マニュアルどおりに取って、テキストどおりにプロフィールを解釈するのがアセスメントではないということを、いちばんに学びたいですよね。

内容(「BOOK」データベースより)
心理臨床家が治療のプロセスを進めるとき、クライエントに対して心理学的働きかけが可能かどうか、またどのような経過や予後が予想されるかなどを、直感的・主観的側面を加味しながら見通してゆかなければならない。本書は、クライエントを客観的に理解する「診断」と、このような「見立て」という点を強調しながら、心理アセスメントの諸方法の効用と限界について精神医学との関係も考慮しながら、まとめたものである。精神医学と臨床心理学など、専門領域を異にする専門家が、お互いの立場を理解しながら協力してゆくためにも有意義な解説書となるであろう。

さて、脳神経障害が疑われる患者に心理査定を施行する際のテストバッテリーについてご質問をいただいたのですが、論述問題かな?

今となっては書くことありすぎて、簡単にまとめられないですね…。そもそも専門ではないので、あまりしっかりとは語れません。私が調べられる範囲での基礎だけ書いてみます。そもそも何をどこでどんな目的で査定するのかという段階から長々となりそうですが、まあそれはおいといて…。


参考文献“Clinical Personality Assessment: Practical Approaches (Oxford Textbooks in Clinical Psychology, V. 2)”より。


まず第1に施行に対する注意点があります。自己報告式査定法の場合にはとくに、疲労・集中の困難・視覚障害・聴力・読語能力の障害への対応が必要です。患者がこれらの障害を検査者に告げず、妥当性のないやり方で施行されることもあるので、注意が必要です。例えば、テストの教示が守られているかモニターする、定期的にチェックし、疲労・集中力の減退があれば休息を取る、視力・読語力についてはテープの利用・拡大表示といった工夫をした解答用紙の利用などですね。


また、解釈に対する注意点もあります。認知・知覚の障害が疑われる場合、自己報告式テストの妥当性が疑わしいものになります。セルフアセスメント能力も欠損している恐れもありますよね。また、精神症状と脳の器質的的疾患によるの症状との混乱の危険性があります。認知と感覚−運動の症状(まひ、疲労、異常知覚、記憶障害)が精神病理的症状としてスコアに現れることもあります。


テスト中の態度はもっとも有効なデータです。リハビリテーションのための情報として、日常的な問題へ一般化できる行動サンプルとして注意して観察する必要があります。例えば、困難な問への対応から、欲求不満耐性、根気、衝動コントロールなどの傾向が推測されます。失敗への対応からは、適切な関心、見当識、拒絶、アパシー、無関心、動機づけの低さが注目されます。終了後の反応からも完全主義の傾向や依存傾向がわかるとともに、患者のストレスコーピングスタイルへの示唆が得られます。


さらに、患者自身から話を聞く、表情・言葉や話し方・行動・外見を観察する、そして家族から情報を得ることの重要性は語るまでもないですよね。


これらの点をふまえれば、どのような査定でも患者にとって役立つ査定が可能になりますが、さらに具体的なテストバッテリーを組むなら…大人ならWAIS-RとWAB失語症検査になるんでしょうか?でも、どのような脳神経疾患が疑われるのかによっても異なりますよね…。そういえば、ロールシャッハでも脳の器質的疾患を疑うオーガニック・サインがあるんですよね。



心理アセスメントハンドブック』にしたがえば、
1.言語障害:WAB失語症検査
2.記憶障害:ウェクスラー記憶尺度改訂版(WMS-R)、ベントン視覚記銘検査、Reyの図形模写テスト
3.痴呆・知能障害:WAIS-R、Mini Mental State Test、長谷川式痴呆評価スケール
     (小児):WISC-R、田中ビネー
4.失行:WAB失語症検査の失行に関する下位検査、標準高次動作性検査
5.失認:WAB失語症検査、聴覚失認については実際に太鼓やラッパなど実物を用いて検査する


☆「成人および小児の大脳損傷による知能障害の評価においては、大脳の特定部位で生ずる失語、失行、失認のため知能検査ができないのか、知能障害のため知能検査ができないのかをある程度鑑別する必要がある。このため大脳損傷による知能障害の評価には失語、失行、失認についての知識が必須である。」(『第35章 神経心理学的アセスメント』p495)


と、あります。


ぜひ、適した参考文献を入手して、ご自分でもいろいろ調べてみてください。