東野圭吾『夜明けの街で』の恐ろしさ、不倫というファンタジー


待望の東野さんの新作を読みました!

夜明けの街で

夜明けの街で


怖かった・・・。
何が怖かったのかというと、「不倫」が怖かったです。
それにはまっていく既婚男性の心理も怖い。そして、既婚男性がはまっていったあとの、相手の女性の態度の変容がまた怖い。それを知った妻の状態の変容も怖い。


「人が人を裏切る」という形として捉えられるもの以上に怖いことはないのかもしれないと思いました。
殺人以上のサスペンスです。
もちろんこの小説には殺人事件があるわけなのだけれども、その影にもその表面にもそのあとにも「不倫」があって、とにかくコワイ小説でした・・・。


結婚したらお互い浮気はせずに一生愛し合うというのが女性のファンタジー
結婚してから、妻以外の女性と熱く狂おしい恋に落ちるというのが男性のファンタジー


このふたつの相容れないファンタジーが現実のものとなったとき、「裏切る」という状態になるのかもしれないですね。けれど、男性のファンタジーは対象が女性であるだけに、成就したときにまたしても相手と異なるファンタジーを心に描くことになるという無限のループがあるんですね。次の相手もまた、永遠の愛と束縛・・・そしてまた男性は次のファンタジーへ・・・
もちろんどちらも実現しないからこそファンタジーなのですが、ファンタジーの枠を超えたものを期待してしまうと「不幸」を感じてしまうのかな・・・。