予定のない小雨の日曜午後に読むべき本

新入りのモモちゃん



久しぶりに何の予定もない日曜日。こんな日は天気が悪いのもまた幸せなものである。お砂糖をたっぷりまぶしたドーナツと,香ばしいコーヒーがあればさらによい。しかし,ドーナツは手に入らなかった。買いに行くのが面倒だったからである。かといって,自分で作ると油の匂いが鼻にべったりとくっついてしまって,ドーナツを食べたいという渇望は消えてしまう。


今日はピンク色の素敵な本,『めくらやなぎと眠る女』村上春樹の短編集を読む。セレクションや順番がとてもとても良い感じだし,この本のサイズや表紙の具合もたまらない。まさにとっておきの日曜日のための本である。ああ,しあわせだ。最初のあたりでは,葬式の多い主人公と喪服をいつもかしてくれる友人の話が気になる。この友人,五反田くんを思わせるよね? 喪服を買い揃えて,台風の日に動物園に行って,夜中の3時に何かを考えそうになると掃除をしたりアイロンをかける彼の静かな精神のひずみが気になる。ドキドキしてしまう。


外出しなくてもいい天気の悪い休日というのはなぜこんなに良いものなのだろう。子猫とともにコタツで寝転がって本を読む。これに匹敵するひとときというのは,付き合いたての恋人との3回目のデートの待ち合わせ時間の直前くらいだろうか。


しかし,ドーナツがないということが,一点の曇り。先日『かくれ家は空の上』という柏葉幸子さんの本を読んでからというもの(やっぱり青い鳥文庫はこころをくすぐる),たっぷりと砂糖をまぶしたドーナツのことが頭から離れない。この本の中では,蟻が来るからと,ドーナツにたっぷりと砂糖をまぶすことができなくて,登場人物は心残りな様子だった。この柏葉幸子さんの本はとっても素敵で,
霧のむこうのふしぎな町』というお話はどうもあの『千と千尋の神隠し』のモデルになったらしい。人間の子どもと魔法の世界の生き物のやさしい交流が描かれることが多い。わくわく・ほのぼのという独特の味わいがある。



精神がすっかり弛緩して拡散してしまっているので,どうにもまとまらない文章となってしまった。そんな一日もまた良いものだ。