逆抵抗―心理療法家のつまずきとその解決

逆抵抗―心理療法家のつまずきとその解決


ころんで学ぶ心理療法―初心者のための逆転移入門を書いた遠藤先生が翻訳。
これを今読んでいます。いい本です。


この前「好意の反作用」について考えてみましたが、今もまだときどきそのことについて考え続けています。


「第1章 逆抵抗とは」p37より抜粋します。


「クライエントに支持を与えすぎたために、クライエントが治療者への敵意を表せなくなっていたことに気付いた。つまりジャックは、中立的な治療者というよりも子どもを溺愛する親のようになっていたのである。」
「クライエントとの間に愛し愛される関係を作るのに一生懸命になってしまったおかげでジャックは、自分に向けられたT氏の攻撃性をそらし、彼と妻との葛藤をひそかに助長してしまったのである。」


「もし、治療者があまりにも親しげに支持的に接するならば、クライエントが治療者の意に反することを言う機会を奪うことになる。」


もしかしたら、このことが「好意の反作用」と同じ意味になるのでしょうか。
好意的であることを表面に出してしまうと、クライエントにもそれを強いることになります。理想化を強いることにもなるかもしれません。「いい子」仮面を維持させてしまうかもしれません。つきあったばかりの恋人同士のように、「嫌なところ」が見えなくなって、片目をお互いにつぶって、相手が理想化してくれたイメージを壊さないように無意識にふるまってしまうかもしれません。


河合隼雄先生は「結果的に“躾る”役割をもつカウンセリング」、あるいは「父性的なカウンセリング」について、著書や講演で述べています。


世間一般のカウンセリングのイメージが、どうしても「優しくあたたかく、受容して、共感して癒す」という方向にあります。そのせいで、クライエントも、駆け出しカウンセラーもまた、「優しくする“縛り”」があるような気がします。


カウンセリングというものが、クライエントが必要とするバランスを見つけながら、心の成長を援助するものであるとすると、はたして具体的にどのような「仕事」をすることになるのか・・・。何をすることが「カウンセラーの仕事」なのか。
もちろんそれは、ひとりひとりに対して違ってくるものなのですが、トータルとしての私の「カウンセラーの仕事論」をこれからも考えていきたいと思っています。