おばかな治療者になろう
- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/04/17
- メディア: 単行本
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「どうしたんじゃ」
「伊良部先生がひきこもっちゃいました」
「あほうはしょうがないのう」オババたちが苦笑いする。
「あほうだと気づいてたんですか?」
「気づかいでか。注射ばっか打って。最初からわかっちょった。でもな、みんな伊良部先生のことは好いちょるよ。あほうは可愛い。気が楽でいい」
「そうそう。わしの神経痛もどういうわけか治まった。わしらは構って欲しいんじゃ。伊良部先生は相手になってくれる」
良介は目から鱗が落ちる思いがした。そういば伊良部は不思議な人気がある。島の子どもたちもすぐに懐いた。尊敬しなくて済むからだ。
いやあ、あいからわずおもしろかったです!
おばかな精神科医(作中は神経科医となっていますが?)のかざらない治療。自分がまったく防衛をつくらないものだから(あるいはその飾らなさが防衛かもしれないですが)、クライエントたちもじゃんじゃんと「素」の自分とむきあっていくんですね。なんというか、つられて。
人間というのは、防衛する必要性のないところでは、自然とその防衛を脱ぐんですね。それはつまりは「病気」を脱ぐことでもあり、そのなかで始めて「病気の下にある弱くて怖い気持ち」とむきあっていくことが可能になるのかもしれないですね。
こう思うと、カウンセラーはその技法と技術と関係性の中でクライエントの防衛をリラックスさせていくわけですが、もっともっと意図的に、自らの防衛を下げることによってそのリラックスしていく早さを促進させることも効果的なのかなあと思ったりします。
この伊良部先生のシリーズはこういったことを考えさせてくれるよい題材だと思います。3作目のこの『町長選挙』は、著名人をイメージさせるクライエントばかりです。クライエントのイメージがすぐにつかめます。でも、前2作の方がそのセラピー(?)の進行過程の「ドキドキとはらはらと大爆笑と納得」が素晴らしく、オススメです☆
この2作、涙流して笑いました・・・。よかったです!