良いカウンセラーを見つけるには:向上心と自己管理能力、そして誠意

学会の夜



『まともなカウンセラーの見つけ方・探し方』というお題で


「クライエントの状態を悪化させないこと」
http://gouda.no-blog.jp/psycho/2006/08/post_dc5d.html
「精度の高いアセスメントができること」
結局はどれだけ精度の高いアセスメントができるか否かだと思います
が、御二方のブログで述べられています。そうですよね!そうですよね!っっと熱く賛同しつつ、私も何か付け加えてみたいと思います!


たぶん、これらはみな同じことを別の角度から論じているのだと思いますが、私の言葉で言い換えさせていただくならば、


「向上心と自己管理能力、


そして誠意」だと思います。


あっ!でもこれでは抽象的過ぎて「見つける」ことが難しいのか・・・。
まあ、でもちょっと書きながら考えてみますね。


1)向上心


 精度の高いアセスメントができるよう常に向上心をもって研修していることが必須です。そのクライエントは世界に一人しかない存在ゆえに、自分とその人が出会ったとき、どのような見立てを行いどのような方針でカウンセリングを行うのがいいのかということについて、正しい答えはありません。


 ですから、常に学会に参加し、書籍と論文で学び、日常の人との関わりで学び、研究し、『自分』という道具の精度を際限なく高めていく努力が必要不可欠です。また、医学的知識を含め、新しい研究に通じることはクライエントの利益のために欠かせないことです。


 「感じ」で「なんとなく」カウンセリングを行っている臨床心理士でも、クライエントの状態を悪くすることはないかもしれません。けれども、長期的には「クライエントが望む方向を見定めることなく、その方向性に関心を持つことなく、カウンセラーが漠然と受身のままカウンセリングを行い、クライエントをどこにも導いていない」という点において、クライエントの時間を損ない、良くなるはずの時間を無駄に過ごさせ、結果的に「悪くしてる」ように感じられる事例検討を耳にすることがあります。そういうケースを目にしたとき、また自己研鑽を怠っている臨床心理士を見ると、すごく歯がゆい思いをします。


 外からの指標としては、研究論文の有無、参加学会の量と質、学会発表の有無といったものをあくまでひとつの目安として加味しながら、必要な場合リファーしクライエントに説明できるだけの最低限の医学的知識・精神薬理学的知識の有無、アセスメント力(クライエントと治療者に役立つ形でしっかりフィードバックできるか)、クライエントに対して見立てと契約と方針をきちんと説明できるか、クライエントのニーズをきちんと把握しており、それに添った形でカウンセリングを行っているといえるか、ということがあげられるのではないでしょうか。


2)自己管理能力


 カウンセラーの精神的・身体的ストレス・プライベートな事情によってクライエントを傷つけないよう最大限の配慮を行うことは何より大切なこと、というか基本の前の基本です。


 しかし、やはりクライエントに対して、カウンセラー側のみの事情によって「イライラしている」と感じさせてしまったり、「機嫌が悪い」と思わせたり、「疲れている」と気をつかわせたり、体調不良によって当日キャンセルするカウンセラーがいます。あるいは、急な移動によってクライエントを適切なフォローアップもなく「見捨て」てしまうカウンセラーもいます。そんなカウンセラーに出会ったら、すぐに別の人を探すべきであると全クライエントは知っておかなくてはなりません。


 もちろんカウンセラーも人間ですから、イライラし、疲れ果て、熱があるということもあります。それでもそのような自分を「予測して」対応し、「予防」し、できる限りコントロールする努力と根性と自己マネージメント能力は、良いカウンセラーになろうとしている人間かどうかを見分けるひとつの大切な指標であると考えています。


 自分も駆け出しの頃はとても未熟で、傲慢になることもあって、自己管理能力が甘く、クライエントを傷つけてしまったことが何度もあったと反省しています。だからこそ、常に、自分がベストの状態で働ける仕事量、職場選び、医師との関係の取り方、プライベートとの兼ね合い、長期休暇の取り方、睡眠量と食事に、かなり気をつかっています。それなくしては、本当にしんどい思いをしてきてすごく過敏な状態になっているクライエントに対し、適切なサービスを行うことはできません。臨床心理士という仕事は、プロ野球選手にもモデルにも女優にも負けない自己管理能力が必要な仕事だと思いマス!誰よりも己を知り、己をしっかりとコントロールするできる人を目指せ!


3)誠意  


 説明するまでもないですね。誠意を感じられないカウンセラーにかかるべきではありません。視線、表情、言葉づかい、服装、髪型、礼儀、態度、姿勢、予約の取り方、時間の守り方などなど・・・様々なところから誠意は感じ取ることができます。社会人として、人と接する仕事として、誠意が感じられるかどうかは最低限のところです。そしてカウンセラーは常にそのような誠意を伝える努力を惜しむべきではありません。



 ・・・うーん、すべてを統合して考えると(ちょっと自分を持ち上げると!)『よいカウンセラーとはどんなカウンセラーですか』という問に熱心に答えられるかどうかがポイントなのかもしれない!!


 もしもあなたがクライエントになるときは、このような問をカウンセラーに向けてみたらどうだろうか?そしてさらに、「あなたは良いカウンセラーですか?」と聞いてみてもよいだろう。その回答にあなたが納得すれば、その人とチームを組んで、カウンセリングという長くしんどい心の作業に乗り出してもよいのではないだろうか?というか、そのくらい慎重に選ぶべきパートナーなのでしょうね。


さて、これを読んでいる臨床心理士(あるいはそのタマゴ)のあなたたちはどう答えますか?


あるいは、クライエントになるかもしれないあなたは、どう答えてほしいですか?