スクールカウンセラーの業務は継続面接なのか?:「学校のカウンセラー」になるという責務


「夜の番茶」さんのブログからです。

スクールカウンセラーに物申す


以下一部引用します。


たった一人で数百人からの児童生徒を担当しなければならないご苦労は拝察申し上げますが、だからこそそのたった一人が面接に時間取られまくってる場合ではないんですよ。(中略)1日のうち何時間かは相談室で複数の子どもを見守るようなことに割くとしたら、あとの何時間かは教員へのコンサルテーションと関係機関との連絡の時間にします。


自分がいない4日の間に何があったのか追っかけて次の4日の見通し立てるだけで相当な時間食うはずで、そのくらいの時間配分にしなくてはやっていけないはずです。にもかかわらず5件も6件も面接入れてるSCはいつその仕事やってんの?と思います。まさか自分がいない日のことは我関せずとでも言うのでしょうか。


同感です!


私も週1回しか行けない学校でのスクールカウンセラー(以下SC)業務があります。出勤してからしばらく、あるいは帰り際の先生方が手の空く時間は必ず、職員室でご〜ろご〜ろしています。すると、先生方がやってきて「こんなことありましたよー」「そういえば…」「あ、あの件ですが」と気軽に情報交換ができて、それに応じたコンサルテーション、本人と家族への介入、関連機関との連絡を行うという「仕事」ができてきます。


継続して面接を行うのは「学校内のレベルで継続面接がもっとも効果的であると判断されるケース」のみに限られるべきであるし、ほとんどの場合は医療機関あるいは相談機関への紹介か、それ以外では家族や担任へのコンサルテーションで改善されるべきケースであるように思います。


「学校内のレベルで継続面接がもっとも効果的であると判断されるケース」というのは、例えば

  • 1学期の間だけなど、短期間の面接で改善が予想されるケース
  • 友達とのトラブルなどで1次的な適応障害を呈しているが、本来力のある方のケース
  • 経済的・物理的・心理的に他機関への紹介が困難なケース(田舎で、免許がなく、時間のない一人親などで民生委員など地域の公的援助の介入まで時間がかかりそうな場合)
  • 「学校内で継続的に面接をしてくれる人がいる」ということがもっとも本人をエンパワーできそうだと推測されるケースでSC以外の適任者がいないケース


などが考えられますね。


ですから、面接希望する人全員と、毎週毎週会っていくというパターンもあるかもしれませんが、本来の臨床心理士が行うスクールカウンセラー業務っていうのは、


「私がなんとかしなくっちゃ!」じゃないんです。


あんた、いつもいないんだから、来年いなくなるかもしれないんだから、

自分がいないとき、その子とその保護者と、その子を預かっている担任と学年と学校全体が、

その子をうまく援助できるように、

援助しなさいよー!!


ってことだと思うのです。


初回面接、あるいは担任や保護者からの話でそれをみきわめて、ベストであると感じられる援助方法を「選択する」のがSCの仕事であると思います。


そもそも、「学校の中で毎週カウンセラーと面接している」子どもは、さらに適応しづらくなってしまうし、家族が毎週面接に来ている場合も同様です。そのあたりをしっかり考慮して、学校の外に居場所を探してあげることであったり、適切な薬物療法をすすめることであったり、毎週担任をエンパワーすることであったり、月に1度程度保護者にエンパワーメントする方が、SCの本来の仕事であると思います。


ですから、「時間のつくり方、使い方」というのは何よりも大切になってきます。
その4時間なり8時間を、どれだけバラエティのあるものにするか、というのが、SCの腕の見せ所だと思っています。


例えば、4時間しかいないのであれば、

  • 1時間は職員室でごろごろ。先生方とおしゃべりしつつ情報交換・コンサルテーション。
  • 1時間は校長先生とお話。気楽に話しつつ、愚痴も聞きつつ、SCから学校全体の情報を伝える。
  • 1時間は教室を見回る。先生方が「心配だ」と言っていた子どもの顔、様子を見る。養護の先生や体育の先生、美術の先生、部活の顧問などから情報収集。
  • 1時間は保護者と電話相談。関連機関と電話で連絡。

で、面接が必要な場合は保護者が来やすい日時で別枠に時間を取ります。月1回程度なら、全体の時間から使えます。


週1回しかいないというのは、本来「いないのと一緒」「使えない」職員です。
学校全体を常に守る消防士」というような意味合いがスクールカウンセラーにはあるので、「いない日にどれだけ“守り”を与えられるか」ということも大切な業務になってきます。


そうですね。医師みたいな感じですよね。自分の指示と介入と選択に、常に責任が伴うのです。
週に1回だけ来て、オペだけして、「あとは次に来るまで連絡つかない」「その間何かあっても、どうしたらいいか指示がない」というのでは、ど〜しようもありません。


ですから、その学校の管理職、学年主任、担任、相談担当者、養護の先生、事務の方、すべての人に対して安心感と指示がなんとなーく(えらそうでなく、雑談や愚痴を聞く中で)与えられていることがとても大切なのです。


また、自分がいないときに、関連機関から連絡があった場合どうしたらいいか、など話し合っておくことも大事ですし、メールアドレスと携帯番号は教頭先生に伝えておいて、何かあった場合連絡をいただけるような関係をつくっておくべきですよね。ここで、「いつも予約の人の面接ばかりで、面接室にしかおられないので…」という状態ですと、勤務日以外に連絡も取りづらいですよね。


以上のような責務がSCにはあるので、私個人としては、小中学校のSCは何校も掛け持ち出来るものではないと考えています。大変ですから…。


でもね、SCってすっごく勉強になるんです。学校でたくさんの子どもに接していると、病院では見ることのできない姿、保護者の姿を見られます。また、発症前の様子もわかり、予防という概念もだんだんわかってきます。精神科勤務者(精神科経験者)こそが、うまく早期介入できると思いますし、病院業務にもプラスになります。すべての病院勤務臨床心理士が、ひとり1校ずつ小学校でSCしてくれたら、かなり予防効果があがるんじゃないかなあと感じます。精神病理学に根付いた、小学生保護者へのエンパワーメントが、今一番必要なんじゃないかな…。