散文

 冬の朝を散歩する

まっしろなみちを まっくろないぬが さくさくと あるいていくよ きらきらのみちを きらきらのいぬが ひかりのように かけていくよ あたらしい くに あたらしい あしあと あたらしい すべて

 お散歩

雪のみちをあるく 雪のあさをあるく しろいみちをあるく あしあとをつけてあるく つかれていても あしあとの深さはおなじ 力が出なくても 雪のしろさはおなじ 犬がついてくる いつもとおなじように

 イヌの笑顔

イヌが笑う。にっこりと。 私は泣く。こころで。 ネコにふれる。そのやわらかなまるいおなかに。 私は迷う。ひとりで。 幸せな物にかこまれていると どれがガラクタだったか忘れる。 どれが必要のないものだったのかわからなくなる。 すべてが手放せなくなっ…

 すべてのネコは

何も見えなくても 歩いていく 何も持たなくても ぐっすり眠る 誰もそばにいなくても 気ままに遊ぶ どんなに寒くても ふっくらした毛で まあるくなって 自分であたためる 先に何もなくても 心配しない いつでも 素敵な肉球があるし いつでも とがった耳がある…

 連休前 本と紅茶

3連休を前にして 未読の美しい本があって 紅茶がある(オランジュ・ショコラとイングリッシュ・キャラメル) 空は澄んでいて ネコがひざにいる 新しいふんわりしたカーディガンと カメラ あたたかい毛布と ペロペロと私の手の毛並みをそろえてくれるネコ 羽…

 冬が来て

匂いが冬になった 夏の海がこいしい あたたかな水がこいしい わたしとあなたをつつむ やわらかな ときは いつか あの海に あそびにいって ねころがるまで

 秋だから短歌

秋だから 熱い湯 染み込み ゆったりと ひとりは広く ため息ほとり 秋だから 人恋しくて 恋しくて 携帯音消し 10時に眠る 秋だから あなたのふとんに もぐりこむ あたためあう 手と足 はやばやと 電気ストーブ つけてみる ネコがかぎつけ ころりころり

 そのとき

そのとき あまりにも 息が止まるような 空が そのとき どうしようもなく とらえがたい 色で そうしたら どうしても あなたに そのまますべて あげたいのかも そのとき どうしても 遠くに そのとき さわれなくても 話せなくても それでもやはり 近く 深く そ…

 孤独

ほんとうに ほしいものが いまここにない そうおもう からっぽなわがままを ほんとうに ほしいものが つたわらない なんども つたえたつもりでいても いちばん かなしいことを 見失い ずっと わかっているつもりでいたが いつも 欠けていることに きづく り…

 ゆっくりと

ゆっくりと幸せが むかってくる ゆっくりと 待つのは 幸せ すばやく幸せが 通り過ぎる すばやく 味わう 幸せ 遠くに幸せが 去っていく 終わって 消えていく ひとつの幸せ なんども なんども 小さくて新しい幸せが またやってる それを待つということが 幸福…

 ささいなことで

ささいなことで 朝焼けの海のように世界が何処までも美しいことに 気づく ささやかなことで 水面にうつる光のように満ちて 満ち足りていることに 気づく 考えても考えても 辿り着けない先にはひとりだけの答えもない ただゆっくりと呼吸をして 待つただ思考…

 幸せになってほしいと思うのに、あなたは

結局、人を愛する気がない。 ちょっと気に入って、ちょっと近づいては、 欠点ばかり見つけて幻滅する。 そんなにまでして、自分を守らなくてはならないような大きな傷があるのかもしれない。 そんなにまでして、「トラウマ」にとらわれて、自分の傷を大事に…

 本当に愛するということ?

本当に愛するというのは、すごく難しいことである。 本当に愛するためには、自己愛を乗り越えなくてはならない。 相手に愛されているのかという不安を乗り越え、 相手に裏切られるのではないかという猜疑心を捨て、 どれだけ自分を好きでいてくれるのかと量…

 Missing

ネコが眠る それは平和で素敵なこと どこかでこどもが笑っている それはおだやかで楽しいこと 友達がそばにいる それはおもしろくてでやさしいこと 天気がよくてあたたかい それは嬉しくてありがたいこと それでもなにかが欠けていて こんなにしあわせのもと…

 孤独かもしれないということは

さみしくても それはそれで 悪くないかもしれないそこに 確かな 気持ちが あるということ せつなくても それはそれで 幸せなことかもしれない誰かを 思っていると いうこと たとえ 勘違いでも 思い込みでも 離れすぎていてわからなくなっても 気持ちが 揺れ…

 (短編小説のための習作 第2話)

(短編小説ための習作 第1話 メモ) - Psychotherapist Tetoの日記あるいはふっくらネコてとの日記 前回のあらすじ: おだやかだった日常にまぎれこんだ1枚のメモ「もちつき 天気晴れ」、そのメモのもつ暴力的な脱力感によって「私」の安寧は津波後のモル…

 (短編小説ための習作 第1話 メモ)

机に向かい、パソコンを立ち上げた。 画面が使用可能な状態となって現れてくるまで、机の上にバラバラと転がっているものに目を向ける。何冊かの辞書、平成18年度の講義の日程、委嘱状、新しく買った本と蛍光ペン。私の日常とともにあるもの。そういったも…

自由であること、あるいは自己一致

誰かの期待に 応えようとしなくてもいい 誰かの好みに 合わせようとしなくてもいい 誰かに嫌われると 心配しなくてもいい 誰かの機嫌をうかがって 言葉を選ばなくてもいい 誰かが喜ぶように 決めなくてもいい 誰かが悲しまないように 「No」と言うのをやめな…

 獅噛み付く

自分が何にしがみついているのか、 わかりたくないのかもしれないし、 わかったつもりになりたくないのかもしれないし、 そもそもわからないのかもしれない。 それは過去のある一瞬かも知れず、 自分がつくりあげた虚像かもわからず、 あるいは幽霊のような…

 letting go

なにかを あきらめなくてはいけないそれはとても痛くて くじけてしまう なにかを手放さなくてはいけないそれはとてもくやしくて つよくにぎってしまう 何かを失わなくてはいけないそれはもう そこにはないから 何かが損なわれるただ 壊れてたことに気づくだ…

 不シアワセの考察

不快なことが起こって 思い通りに行かなくて それがたとえ、どこかではうすうす予想していたことでも 自分を騙しだましやってきたことに気づくのは とても苦しいことなのです。 人はあまりにも身勝手な生き物なので 自分があまりにもかわいくて大切なので 嫌…

 悲しみ

避けて通ることのできない悲しみの始まりは どこからやってくるのだろう どこからいつのまに人の中に入りこんで 何を奪って 何を与えていくのだろう シアワセだと思っていたことの中にもひそんでいた見ないようにしつづけた 思い通りにいかなかったことが悲…

Letters:先生へ

いつまでも 未熟でおばかなわたしたちを 笑いながら 見守ってくれて いつも わがままでぎゃーぎゃー語るわたしたちに ゆっくり つきあって どれだけでも ばくばく食べてどんどん飲むたびに 嬉しそうに にっこりして たくさん 励まして たくさん 愛して たく…